User Interview Vol. 1 Ch.2 / Creative Consultant Nagisa Ichikawa

objcts.ioユーザーの方に、愛用の道具についてインタビューする企画。

 

第一弾でお話を聞くのは、ファッションとテクノロジー両業界でクリエイティブコンサルタントとして活躍される市川渚さん。

 

ご自身で写真や動画の撮影も手がけられ、objcts.ioとは2019年にMavic Air Bagを共同開発しました。

 

objcts.ioのバッグにはどんな機材を入れているのか?インタビューの前編でお伺いしたお気に入りの機材のお話に続いて、後編ではテクノロジーを活かした市川さんの暮らし方について伺いました。

テクノロジーを試し、生活に取り入れる

ーー新しく出てきたサービスやガジェット、テクノロジーを常に試されている印象なんですが、市川さんは意識的に新しいものを探されているんですか?

意識的よりは無意識的にやっていることの方が多いです。

性格の話になってしまうんですが、私は芯がとてもネガティブなこともあって、日常生活のなかでポジティブなことに目を向けたいと常に思っているんです。

何か新しいものとか、新しい仕組みを導入して、便利になったり、面倒な作業が面倒じゃなくなることって、前に進むことに繋がっている。それって、とてもポジティブ。なので無意識に新しいものを探しているんじゃないかなと思います。

 

これまでになかった新しい何かが生まれて、それがこれから私たちの生活にどう関与して、どう変わっていくのか、そんなちょっと先の未来のことを考えるのが好きなんですよね。無意識に新しいものを探したり、試したり、というのは、生きていく上での「ポジティブのタネ探し」のひとつなのかもしれません。

 

あとは、単純に面倒くさがりだからっていうのはあります(笑)

 

ーーobjcts.io代表の沼田も似た話を良くしているんですが、面倒な作業の効率を良くして自分が楽になるものはないかっていうのを探す方が、効率が良いということでしょうか?

そうそう。

冷静に考えると、楽をする方法を探すこと自体に時間がかかるので、効率が悪いという見方もあるとは思いつつ、方法を見つけることに一旦時間を割いてしまえば、後々無駄なことに時間を割かなくても済むので、長い目で見たら、そちらのほうが効率が良かったりする。面倒な作業を繰り返すことなく、自分にとって効率の良いものや方法を常に探しているんですよね。

 

今やりたいことは今やりたいし、今欲しいものは今すぐ欲しい。時間は有限なので、そうする為には自分で自由に使える時間を効率的に増やしていくことが必要になってくる。割と欲望に忠実に生きています(笑)

子どもの頃からパソコンをいじるのが好きだったのは、面倒な作業を自分の代わりにやってくれて効率的だし楽できるという認識が根底にある。コンピュータやテクノロジーというものは、使い方によっては、自分の絶対的な味方になってくれる存在だと信じているんですよね。だから、近年よく世間で耳にする「AIは人間の仕事を奪っていくから、恐ろしい」というような論調には、はてなマークが浮かびます。どんな時代になっても、人間にしか出来ないことは絶対にあると思うので、未来を悲観するよりも、今、何をすべきなのか考えたい。



仕組みができると、
自分の為の時間ができる

ーーいつごろからそういう意識を持たれていたんですか?

どうですかね、子どものころから家にパソコンがあって、それを自由に触れる環境だったから自然と芽生えてきたものだと思います。

社会人になりたての頃とかはエクセルで簡単なマクロを組んで、リストの作成を自動化するとか、そんなこともやってましたね。

当時は便利なウェブサービスやアプリもなかったですし、私がいたファッション業界は特にアナログな部分も多かったので「エクセルのリストにある数百個のメールアドレスを一つずつ、メールソフトのBCC欄にコピペする」みたいな地味な作業がアシスタントクラスのスタッフに飛んで来るんです(笑)私の中には「こういう面倒な単純作業こそ、コンピュータに任せるべきだ」という考えがあったので、「おそらく、ほぼ一発で処理するように仕組みを作れるので、少し時間ください。」と自動で処理できるシートを作ってました。

 

一回仕組みを作ってしまえば、同じ作業を時間かけずに誰でもやれるわけだから、そういった業務の効率化を少しずつ重ねていけば、自分も周囲の人たちも、使える時間を増やすことができる。私は当時PRの仕事をしていたので、効率化して生まれた時間の分だけ、誰かに会って話したり、企画を作ったり、人間にしかできない仕事に時間を割くことができていたんじゃないかなと思います。

自分自身が「生きる」ことで
育まれるクリエイティビティ

ーー画像や動画編集の際の意識について伺いたいんですが、本インタビューの打ち合わせにて、「写真の撮影、編集などは伝えるための手段である」という話が出ました。現在の撮影、編集スタイルを見つけたりするために意識されていたことなどはありますか?

文章も写真も動画も同じなんですが、自分ならではの視点が表現できているかという点はとても意識しています。

記事を書く上でいえば切り口や語り口の部分、写真だったら「私が撮ったもの」だというのがわかる色なり、構図なり、撮り方なりというのは意識してますね。

 

制作に関しては、日常からインスピレーションを得ることが多いです。例えば「動画を作ろう」と思い立った時、すでに活躍されているクリエイターの動画やハウツーを見て、形で真似していくというよりは、日々触れてきたものや場面で、頭の中に刻まれたスナップショットたちの断片をあつめて、それを組み合わせて、アウトプットしていくイメージ。

もちろん、それをどうやって表現するか、技術的な部分に関しては、本を読んだり動画を見たりして勉強する部分もありますが、既に存在している作品を意識的にサンプリングしようとすると、その作品にとらわれ過ぎて、ただのパクリのようになってしまうことが自分でもわかってるので、何か制作をするときは、あえて直接レファレンスになるものを見ないようにしています。なので、あまり「この写真家さんのこの要素を意識して撮ってみよう」みたいなことはしたことないですね。

 

だからこそ、色々な場所に出かけたり、作品を見たり、情報に触れたりして、無意識の部分に刻まれるインプットを日常的に重ねることが重要になってくる。何かを制作している中で、「こうやって撮ってみよう」「こうやって見せてみよう」と浮かんでくるビジョンは、おそらく色んなインプットの中で自分がいいなと思ったものが合わさって、見えてくるものなんです。

 

そういう意味では、日々を生きてること自体がアウトプットのヒントになっているのかもしれないですね。

いつもの週末と
最高のカメラバッグの話


クリエイティブコンサルタント
市川渚
https://nagiko.me/about

 

ファッションデザインを学んだのち、海外ラグジュアリーブランドのPRなどを経て、2013年に独立。ファッションとテクノロジーに精通したクリエイティブ・コンサルタントとして国内外のブランド、プロジェクトに関わる。

また自らクリエイティブ制作や情報発信にも力を入れており、ジャーナリスト/コラムニスト、フォトグラファー、動画クリエイター、モデルとしての一面も合わせ持つ。