デザインの意図 -ウォッシャブルレザートート-
デザインの意図 -ウォッシャブルレザートート-
「デザインの意図」では、弊社デザイナーの角森智至が開発背景や製品に込めたこだわりをお伝えしています。
ファッションアイテムには、1つ持ってると便利なものがいくつかあります。上質な白Tシャツ、綺麗めスニーカー、おしゃれなシャツ、シンプルなトートバッグなど。
今回発売した”ウォッシャブルレザートート”もそんなアイテムの1つになることを目指してつくりました。今回はその背景とこだわりについて書いていきます。
ウォッシャブルレザートートとは
エコバッグのようにシンプルな製品設計でありながら壊れにくい構造を採用することで「上品で永く使える」ことを実現した、自宅で洗濯乾燥できるレザートートバッグです。
サブバッグとしてはもちろん、丸めて持ち歩いたり、休日のメインバッグとして使うなど様々なシーンで使えるようにデザインしています。
Black
Off White
なぜウォッシャブルレザートートをつくろうと思ったのか
きっかけは、バッグを2個持ちしている知人女性たちの話を聞いたことです。
多くの男性は、大きなバッグを涼しい顔で持ち歩いてますが、女性の中には1つのバッグに荷物をまとめると肩や背中を痛めたり、過度な疲労が溜まる人がいます。
また、男性と女性では骨格が異なるので、大きなバッグを女性が持つと妙に無骨な印象を受けたり、ファッションスタイルのバランスが取れていない中途半端な印象を受けることもあるため、大きいバッグを持つことに抵抗を感じる女性は少なくありません。
バッグの2個持ちは荷物を分散させることで身体への偏った負担を減らしつつ、自分のファッションスタイルを崩さないための工夫であることを知人の話を通して知り、サブバッグの存在意義を改めて強く感じるようになりました。
しかし、満足のいくサブバッグを持っている人はあまりいません。
紙袋または布袋を活用し、壊れたら交換するを繰り返している人も多く、話を聞いているうちに「この消費サイクルを少し良い方向へ変えてみたいな」という思いも芽生え、今回の製品を作ってみることにしました。
女性が抱える悩みがきっかけで始めたものの、シンプルで使い回しのきくトートバッグが生活の中にあるのは男女問わず嬉しいものです。
よく使う物を入れて持ち歩くと出し入れがスムーズで快適だったり、エコバッグのように持ち歩けて仕事帰りの買い物で使えると便利だったり、休日に本を持って近くのカフェまで出かけるときにちょうど良かったり。
様々な利用スタイルに合う、上品で永く使えるトートバッグを私たちらしい形で仕立てたのが、今回開発した”ウォッシャブルレザートート”です。
このバッグが、生活のあらゆるシーンで活躍するものになれたなら望外の喜びです。
こだわりのポイント
“ウォッシャブルレザートート”を開発するにあたって3つの目標があったので、それぞれどのように達成したのか説明しながらこだわりについて書いていきます。
・清潔な状態を保てるか
・高い耐久性
・上品な見た目
まずは清潔な状態を保てるかについて。
本製品は、最近持ち歩く人が増えたエコバッグのような使い方も想定しているため「自宅で洗濯乾燥できる革」を採用しています。
革は水に弱いはずなのに洗濯できるというのはどういうこと?と疑問に持たれる方もいると思いますが、革という素材は年々進化しており、特別なレシピでつくることで色落ちしにくいかつ激しい縮みや変形が発生しない仕様にすることができるのです(わずかな縮みは発生します。以下画像参照)。
もちろん一般的なレザーバッグ同様、洗わずに使い続けても構いません。
下の画像を参考にどちらの雰囲気が好みなのか確かめてみてください。
左:洗濯済 / 右:未洗濯
次に高い耐久性について。
レザーバッグなのに洗濯乾燥できる意外性は面白いと思いつつ、従来のレザーバッグに使われている芯材は水に弱いため、繰り返し水に浸されても壊れないように工夫する必要がありました(雨程度ならまだしも、水に浸されて支障がない芯材はごく僅か)。
職人としてものづくりに携わっていた経験を活かしながら、水に強くて劣化しにくい芯材を活用して製品構造を構築することで高い耐久性を実現させています。
Off White
最後に上品な見た目について。
洗濯ができて耐久性があるレザーバッグというだけではただの便利なバッグでしかないため、上記の用件を満たしながら美しさを携えていることが必要でした。
機能的でありながら上品な見た目を両立させることは、私たちらしい製品をつくる上で最も大切にしている部分で、使い手に永く愛してもらえる製品になるかどうかを左右します。
今回、特にこだわった部分は「ハンドル」「胴体周囲に入れたスポンジデザイン」「ロゴ」の3つ。
ハンドルは「コバ」と呼ばれる革の断面が一切露出しないように仕立てられています。
洗うことを想定している本製品では、コバを綺麗に仕立てるためのインクを使うことができないため、ハンドルを三つ折りと呼ばれる構造で組み立てています(手紙を丁寧に三つ折りするような組み立て方だと想像してもらえればわかるかもしれません)。
この組み立て方は、ステッチを中心に1本だけ入れたら組み上がる構造で、洗練された見た目になりやすいかつコバが露出しないので本製品に最適なデザインでした。
上品な見た目で、耐久性を担保し、なおかつ洗うことができる。
この3つの要件を満たすハンドルデザインはこれしかないと思い、最初の試作品から採用して最終仕様品にも同じ構造を採用して製品化することになりました。
胴体周囲に入れたスポンジデザインというのは、下の画像の部分です。
私たちの製品には「スポンジワーク」と呼んでいるデザインをできる限り入れるようにしており、私たちらしさを表現する手法の一つでもあります。
今回のスポンジワークは、ブランドらしさを感じる見た目を表現しているのはもちろん、シンプルな構造であるがゆえに簡素な見た目になってしまいやすいトートバッグに立体感をもたらすことで上質な印象を与える役目を果たしながら、バッグのフォルムを綺麗に保つ骨組みとしての役目も担っています。
バッグ胴体の周囲に入れたスポンジワーク
ロゴの入れ方にもこだわりがあります。
バッグ下部にさりげなく入れてますが、この配置にすると使い手の腕で見えなくなったり、荷物を入れてバッグが膨らんでもロゴが下向きになりにくいので、ロゴが常に正面を向いて見えやすいのです。
ロゴを主張したいわけではありません。
この位置に入れることで、簡素な印象を与えてしまうトートバッグになることを避けられるのではないかと考えて配置しました(ぜひ下の画像のロゴを指で隠してみてロゴが無い状態を想像してみてください)。
素材の進化がもたらすもの
現代を生きる私たちの周りには様々な問題が横たわっていますが、素材の進化は生活に新しい選択肢をもたらしてくれます。
先進的な素材が生み出されたのなら、それを扱う人たちもまた、取り組んだことがないものづくりに挑戦し、新たな価値を生み出していくことが必要です。
新素材を使った特殊な製品を生み出そうとすると様々な壁にぶつかってしまい、時には落ち込むこともありますが、壁を越えた先に使い手にとって明るい未来があるのであれば、私たちはこれからも挑戦し続けます。
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