デザインの意図 -Knirps T.220 for objcts.io-
デザインの意図
-Knirps T.220 for objcts.io-
爽やかな新緑の季節から徐々に湿度が上昇し、梅雨の気配を感じる今日この頃。
100年近い歴史がある老舗折りたたみ傘ブランド「Knirps(クニルプス)」とのコラボレーションについて書いていく。
Knirps(クニルプス)とは
Knirps(クニルプス)は、世界で初めて折りたたみ傘を生み出した老舗ブランドで、質実剛健なドイツ人が認めた確かな品質とモダンなデザインが特長だ。
1928年にハンス・ハウプト氏が折りたたみ傘の構造を考案し、同年3月16日に特許を取得。ハンス・ハウプト氏は、発明した折りたたみ傘を「Knirps」と名付けたことがブランド名の由来になっている。
ヨーロッパではKnirpsは折りたたみ傘の代名詞となっており、ドイツ語の辞書では「Knirps=折りたたみ傘」と表記されるほど広く認知されている。
今回のコラボで採用したKnirpsの定番モデル「T.220」は、私自身も5年前から黒とネイビーの2本を愛用しているが、とにかく使いやすい。
強風に耐えうる強固な8本骨構造をベースとする洗練されたデザインで、グリップのボタン1つで傘の開閉ができる機能があることで、室内から野外へ出るときや土砂降りのなか急いでタクシーへ乗り込む際の動きに無駄がでない。
また、力が強くない女性が使ってもシャフトが不意に飛び出すことを防止する「セーフティー・システム」(日本特別仕様のみ)が搭載されているので、私の妻が使う際にも安心して使えるのが嬉しい。
加えて、永く使える物を提供するブランドの姿勢を体現するようなサービスとして「購入から5年以内に通常の使用で故障した場合は保証の対象となる」のも驚きだ。
コラボ別注品 Knirps T.220 for objcts.io とは
定番モデルであり、私も愛用している「T.220」をベースに、通常モデルとは2箇所ほど異なるデザインを採用した特別モデルとなっている。
1箇所目は、コラボ品ということでドット柄で構成されたブランドロゴを入れさせてもらったのだが、通常ではあり得ない傘の内側に配置することにした。
なぜこの配置なのかは本記事下部の「なぜつくったのか」で書いているので気になる方はぜひ。
2箇所目は、グリップの色を通常モデルのグレーから黒へ変更することで傘全体が黒で統一されている。
オールブラック仕様にできたことも嬉しかったが、この変更によってグリップの赤いボタンがより際立つようになったことも個人的には重要だと考えている。
クニルプスのロゴに配置された赤ドット、グリップの赤いボタン、傘に配置したロゴの赤いドットが、今回のコラボを象徴するデザインとして成り立っている。
カラビナ付アンブレラカバーとは
今回の販売では、傘の仕様に合わせた防水レザー製のカラビナ付アンブレラカバーを3色展開している。
革手に馴染みやすい防水シュリンクレザーを全面に使用し、濡れた傘をカバーに入れてもカバー全体が水浸しになることを防ぐことで、バッグへ収納する際に他の荷物が濡れないよう配慮した。
※カバーへ傘を収納する際は、傘についた雨水を落としてから収納することを推奨する。素材自体は高い防水性を持つが、縫製された革製品である以上、パーツとパーツの縫い目から水が漏れる可能性があるためだ。
また、カラビナを取り付けることで、別売りのショルダーストラップを活用した肩掛けスタイルで持ち歩いたり、バッグのハンドルに引っ掛けて持ち歩くスタイルも可能にした。
できるだけ両手をフリーにしておきたいと考えている私たちの思想を反映させたデザインとなっている。
どんな製品を目指したのか
雨の日も気分良く、ふと空を見上げた際に心が動く美しいプロダクトにしたいと考えながら開発に臨んだ。
雨の日は憂鬱。
と、言うと多くの人が共感するかもしれないが、私は『雨の日でも良いことがあるよね』と思いたい性格だ。
雨の日の暗い気持ちは、受け取り方ひとつでまるで別物にすることができるほど脆弱なものだ。
日本は、1年間でおよそ100日も雨が降る。
3〜4日に1回、暗い気持ちで過ごすなんて勿体無い。
なぜつくったのか
私たちが2019年に製品化したアンブレラカバーの初期モデルがきっかけとなって実現したコラボなのだが、傘本体もデザインするにあたって、なぜ今回のようなデザインにしたのかを言葉にしておきたい。
まず最初にお話をいただいたとき、「これは傘と鞄のコラボレーションだ」と考えた。
もし、あなたがイギリスの児童文学に馴染みがあるのなら、ある女性が思い浮かぶかもしれない。
子供たちをファンタジックな世界で楽しませ、大人たちには人生における大切なモノを教えてくれるその女性は、多くの人から愛されている。
ある現代アーティストもその女性が登場する作品に影響を受け、東京に作品を残している。もちろん、傘と鞄を描いて。
今回のデザインを考える際に想起されたこの2人の人物が発するポジティブなメッセージと、シニカルなメッセージの両方を混ぜ合わせ、私なりに解釈したデザインにすることとした。
私がつくるプロダクトには、元々目立つ形でロゴを入れることは少ない。ロゴを前面に出すのが嫌いとまでは言わないが、必要なければ出すことはしない。
今回も同様だ。
傘の表にロゴを出す必要性を感じなかった。
好きなドラマのワンシーンで、弁護士事務所の結束力を示すために事務所のロゴが大きく掲げられた傘を見せつけ合うシーンがあるのだが、私にとって傘はそういった強い主張を見せるのに便利なアイテムだと認識している。
そういう使い方ができるデザインは、傘を持っている人ではなく、傘を見ている人のためのデザインだ。
私は、傘を使ってくれる人のためのデザインにしたかった。
土砂降りに打たれていても、地面ばかり見るのではなく、ほんの少しだけ空を見上げたくなる、そんなプロダクトだと感じてもらえたならとても嬉しく思う。
記事内で出てきた製品
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